ホッカイドウ競馬、そして地方競馬の雄・・・そう、彼の名はコスモバルク。
今年のJRA牡馬3冠ロード(皐月賞・日本ダービー・菊花賞)、振り返ってみると、いつも話題の中心にはバルクがいた。1番人気で挑んだ皐月賞(JRA中山)は、伏兵のダイワメジャーに0.2秒先着され2着に惜敗。そして巻き返しを図るべく出走した日本ダービー(JRA東京)では、大舞台に潜む魔物に足元をすくわれたのか、折り合いを欠いてまさかの8着惨敗。
しかしバルクの夢はついえない。春の無念を払拭すべく、北海優駿(旭川)・セントライト記念(JRA中山)を連勝し、理想の過程を経て秋の大目標、菊花賞(10月24日、JRA京都)に駒を進めてきた。
当日は10月末とは思えないほどの好天に恵まれ、バルクの勇姿を一目見ようと非常に多くのファンが詰めかけた京都競馬場。レースを直前にして、1番人気に支持されたのはダービー2着馬のハーツクライ。コスモバルクは僅差の2番人気に推された。
パドックでの周回中からあふれんばかりの気合いを漂わせ、ファンからの声援を受けながら、パートナーでもある五十嵐冬樹騎手を背にスタート地点へ快調に向かったバルク。そして時計の針が15時40分を指したとき、スターターが赤旗を振り、ファンファーレが鳴り響く。スタンドが揺れんばかりのボルテージに包まれ、ついに夢へのゲートが開いた・・・
若干遅れ気味ではあったが、まずまずのスタートをきったバルク。おおかたの予想では、好位につけるだろうと思われていたが、1周目の第3コーナー過ぎ、抑えきれない勢いでスッと他馬を外から交わし、早くも先頭を奪う展開。これを見た数万人のファンがどよめきにも似た歓声をあげる。
ざわつくスタンド前を通過し、向正面を過ぎてもバルクの位置取りは変わらない、京都競馬場の特徴でもある3コーナー手前の坂を乗り越え、4コーナーを迎える。残りは約400メートル、追い出しにかかったバルクの横には1頭の馬が並びかけていた、岩田康誠騎手(兵庫)騎乗の伏兵デルタブルースだ。
残り200メートル地点までは2頭のマッチレースとなったが、ここから抜け出したのはデルタブルースの方だった。そのまま押し切ったデルタブルースが菊花賞の栄冠に輝き、バルクは懸命に食い下がったものの、他の2頭に交わされて僅差の4着に敗れた。
レース後の記者会見。五十嵐冬樹騎手の表情はさすがに硬かった。しかし、ダービーの時とは異なり、「この競馬で負けるのであれば仕方がない。出来うることは全てやった」と、コメント。またバルクについても、「今までで最高の仕上がりであり、折り合い面も悪くなかった、なにより、直線でもバテることなく、懸命に最後まで全力を尽くしていた。今回は勝った馬が強かった」と、激戦を共にしたパートナーを労っていた。
コスモバルク陣営(チームコスモバルク)では、今後もJRAの芝G1競走に挑戦を続けることを示唆している。残念ながら、地方所属馬初のJRAクラシック制覇と言う偉業を達成することは叶わなかったが、幾多の競馬ファンを熱狂、感動させ、夢見させたことは、04年の日本競馬史上に大きな1ページを刻んだのではなかろうか。そう、かつてのハイセイコー、オグリキャップといったスーパースターのように・・・
夢の続きはこれから、コスモバルクのチャレンジはまだまだ終わらない。
*第65回菊花賞の成績はJRA(日本中央競馬会)のホームページをご覧ください。
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