「どうしてもこのレースだけは勝ちたかった」。昨年の優勝馬サウスヴィグラス陣営の言葉だ。そう、大接戦の末、ハナ差で悲願のタイトル手にした第3回JBCスプリントG
。
それから1年、あの熱戦で2着に敗れ、涙をのんだマイネルセレクト。引退したサウスヴィグラスにかわり、ダートの短距離王者を目指すべく挑んだ"Road
to JBC"東京盃G
を1番人気で制し、本番の舞台へと駒を進めた。
出走馬12頭のうち、実に8頭が東京盃出走組ということもあり、単勝1.5倍と圧倒的な1番人気に支持された同馬。そして電撃スプリント戦のスタートが切られた・・・
敢然とハナを奪ったのは、「大井のボス」的場文男騎手を鞍上に配したカセギガシラ。2番手にディバインシルバー、そして好位3番手につけたマイネルセレクト。息の入らない流れになったレースは早くも4コーナーから直線へ。先頭に踊り出たディバインシルバーをアッサリと交わし、栄光のゴールへ突き進むマイネルセレクト。懸命に追いすがるアグネスウイングと、インを強襲したサニングデールを完封し、昨年の惜敗を払拭する完璧なレースで第4回JBCスプリントの栄冠を手にした。
優勝したマイネルセレクトは、今年JRA牡馬クラシックを騒がせたコスモバルクと同じ加野牧場の生産馬。G
制覇を目標にしていたのはどちらも同じ。そして先にその夢を現実にしたのはマイネルセレクトだった。物事には「流れ」と言うものがある、もしかすると今回の勝利はバルクが挑むG
戦線における活躍の呼び水となるものかもしれない。
ともあれ、これでダートスプリント競馬の頂点に君臨したマイネルセレクト。ノボジャック・スターリングローズ・サウスヴィグラスに続き、その名を歴史に刻みこんだ。
今後のスケジュールについては、昨年同様ドバイ遠征を視野に入れて調整が進められる。日本一のダートスプリンターは、JBCのタイトルを胸に、世界制覇へと動き出した。
なお、直線で力強い伸びを見せた高崎所属のタイガーロータリーが5着に食い込み、地方勢最先着となった。
今年で4回目を数えるJBCクラシックG
。しかしながらこのレースを制した馬は、第1回のレギュラーメンバーと、もう1頭のみ。
そう、補欠馬からの繰り上がりで第2回JBCクラシック(盛岡)を圧勝し、続く第3回JBCクラシック(大井)をディフェンディングチャンピオンとして快勝。そして今年の第4回JBCクラシックを制し、3連覇の偉業を果たしたダート界の「首領(ドン)」、アドマイヤドンだ。
JBCスプリントの興奮が冷めやらぬまま、4万を超える観衆が4コーナー奥の発走地点を見つめる。単勝1番人気(1.3倍)は無論アドマイヤドン。そして迎えたその瞬間、スターターが赤旗を振り、生ファンファーレが響き渡ると、スタンド全体が波打つほどの歓声が夜空にこだまするなか、ゲートが開いた。
"Road to JBC"マイルチャンピオンシップ南部杯G
(盛岡)でアドマイヤドンを封じ込めたユートピアがハナを主張し先頭に立つ。2番人気に支持された船橋のナイキアディライトが2番手に控え、01年の南関東4冠馬トーシンブリザードが外枠からインに切れ込んで3番手を確保。レース展開はこの状態で落ち着き、3連覇を狙うアドマイヤドンは中団より少し前に位置取り、各馬の動きを伺う。
向正面を過ぎるあたりで仕掛けていったのは、船橋のアジュディミツオー、アドマイヤドンはその直後を追走し、3コーナーから4コーナーをまわる。そして直線に向いて逃げるユートピアを先に交わしたのはアジュディミツオー、しかしその直後には既にアドマイヤドンが力強く脚を伸ばし、アジュディミツオーを捕らえる。
これで決まりかと思われた、しかし一旦は交わされたアジュディミツオーが脅威の根性でアドマイヤドンに並びかける。この2頭でのマッチレースにファンのボルテージも最高潮。そしてゴール板の一完歩前、抜け出したのは王者アドマイヤドンだった。
走破タイムは2分2秒4。これは昭和55年のタガワキング以来、24年ぶりのレコードタイム更新となる。JBCというレースがいかにレベルの高いものなのかがよく分かる。
1週間前に突然の病気でこの世を去った半兄のアドマイヤベガ。その無念に報いるかのごとく、弟は大記録を見事に成し遂げた。天国の兄にもこの偉業は届いているだろう。