地方競馬からのお知らせ
2022/11/28
全日本的なダート競走の体系整備について
1.経緯および趣旨
中央競馬と地方競馬の本格的な交流が始まった1995年から拡大したダート交流重賞は、1997年に全国的な統一格付基準が導入されたことにより、以降はダートグレード競走と名称を変え、これまで日本のダート競走の発展に大きく貢献してきました。
一方で、ダート競走の中心的役割を担うべき地方競馬においては、全日本規模の統一された競走体系の構築が実現できておらず、芝競走と比較してもダート競走は競馬関係者や国際的な評価の面で後れをとっている状況です。
そこで、芝とダートを両輪とする日本競馬の発展を目指し、地方競馬が主体となってダート競走の体系整備を行うことといたしました。先般発表した3歳ダート三冠競走の創設や、今回発表するさきたま杯のJpnI昇格等の全日本的なダート競走体系の整備により、高い能力を持った馬が様々な適性に応じて活躍できる場を提供し、魅力ある競走を実施することで、ダートグレード競走の質と価値を高めてまいります。
2.体系整備の概要
(1) 3歳ダート三冠競走を中心とした体系整備
① 3歳ダート三冠競走の創設
中央競馬・地方競馬の所属の枠を超えた3歳ダートチャンピオンを決定する全日本的な競走体系の構築という観点から、羽田盃(JpnI・大井1,800m)および東京ダービー(JpnI・大井2,000m)を新たにダートグレード競走として実施いたします。
また、ジャパンダートダービー(JpnI・大井2,000m)はジャパンダートクラシックへ改称し、10月上旬に時期を変更して実施することとし、同競走の優勝馬にはJBCクラシックの優先出走権を付与します。
なお、前述3競走を「3歳ダート三冠競走」と位置付け、賞金額を大幅に増額し、併せて三冠ボーナスを設定いたします。
【参考】3歳ダート三冠競走の創設(6月20日広報発表済)
競走名 | 格付け | 性齢 | 負担重量 | 実施場 | 実施時期 | 距離 | 1着賞金 |
羽田盃 | JpnI | 3歳牡・牝 | 定量 | 大井 | 4月下旬 | 1,800m | 5,000万円 |
東京ダービー | JpnI | 3歳牡・牝 | 定量 | 大井 | 6月上旬 | 2,000m | 10,000万円 |
ジャパンダートダービー →ジャパンダートクラシック |
JpnI | 3歳牡・牝 | 定量 | 大井 | 10月上旬 | 2,000m | 7,000万円 |
② 前哨戦の整備
現状の3歳ダート路線では1月から4月までダートグレード競走の空白期間となっていることから、ブルーバードカップ(JpnIII・船橋1,800m)をはじめとする複数のダートグレード競走を新設し、3歳ダート三冠競走に向けた体系を整備いたします。
そのうち3歳ダート三冠競走の前哨戦として、羽田盃の前哨戦に雲取賞(JpnIII・大井1,800m)、京浜盃(JpnII・大井1,700m)を位置付け、新たにダートグレード競走として実施いたします。
また、東京ダービーの前哨戦にユニコーンS(GIII)を位置付け、実施時期等を変更して実施いたします。
さらに、ジャパンダートクラシックの前哨戦に不来方賞(JpnII・盛岡2,000m)を位置付け、新たにダートグレード競走として実施いたします。
なお、三冠競走における出走馬の選定については、各競走の前哨戦で上位となった馬が優先的に出走できる選定方法を予定しております。
競走名 | 格付け | 性齢 | 負担重量 | 実施場 | 実施時期 | 距離 |
ブルーバードカップ | JpnIII | 3歳 | 別定 | 船橋 | 1月中旬 | 1,800m |
雲取賞 | JpnIII | 3歳 | 別定 | 大井 | 2月中旬 | 1,800m |
京浜盃 | JpnII | 3歳 | 定量 | 大井 | 3月中旬 | 1,700m |
ユニコーンS | GIII | 3歳 | 別定 →馬齢 |
JRA東京 | 6月中旬 | 1,600m |
→東京ダービーの前哨戦として整備 | ||||||
不来方賞 | JpnII | 3歳 | 定量 | 盛岡 | 9月上旬 | 2,000m |
(2) 2・3歳ダート短距離路線の整備
① ダートグレード競走の整備
3歳ダート短距離路線においては、中央競馬・地方競馬ともに目標となる競走が不足していることから、兵庫チャンピオンシップの競走距離を1,870mから1,400mへと変更し、3歳春季短距離路線の頂点競走として位置付けます。
併せて、古馬の層が厚い短距離路線における3歳馬の賞金獲得機会拡大の観点から、北海道スプリントカップ(JpnIII・門別1,200m)の出走資格および時期を変更して実施いたします。
また、2歳ダート短距離路線においては、出走馬の質の向上を図る観点から、エーデルワイス賞(JpnIII・門別1,200m)の時期を変更して実施いたします。
競走名 | 格付け | 性齢 | 負担重量 | 実施場 | 実施時期 | 距離 |
エーデルワイス賞 | JpnIII | 2歳牝 | 定量 | 門別 | 10月中旬 →11月上旬 |
1,200m |
北海道スプリントカップ | JpnIII | 3歳以上 →3歳 |
グレード別定 | 門別 | 6月上旬 →8月中旬 |
1,200m |
【参考】2・3歳ダート短距離路線の整備に伴い変更となる競走(6月20日広報発表済)
競走名 | 格付け | 性齢 | 負担重量 | 実施場 | 実施時期 | 距離 |
兵庫チャンピオンシップ | JpnII | 3歳 | 定量 | 園田 | 5月上旬 | 1,400m |
②重賞級認定競走(ネクストスター)の新設
頂点として位置付けられる兵庫チャンピオンシップに向けた、各主催者・各ブロックにおける短距離競走の体系整備の観点から、2歳秋および3歳春において高額賞金の重賞級認定競走(ネクストスター)を新設いたします。なお、同競走については、ダート適性馬の地方競馬への早期入厩を促進する観点から、地方デビュー馬のみ出走可能といたします。
また、3歳春の重賞級認定4競走(ネクストスター)の優勝馬には兵庫チャンピオンシップへの優先出走権を付与いたします。
重賞級認定競走(2歳秋・8主催者)
競走名 | 性齢 | 負担重量 | 実施場 | 実施時期 | 距離 | 1着賞金 | 備考 |
ネクストスター門別 | 2歳 | 定量 | 門別 | 10月上旬 | 1,200m | 1,000万円 | 地元所属馬限定 |
ネクストスター盛岡 | 盛岡 | 10月中旬 | 1,400m | ||||
ネクストスター金沢 | 金沢 | 10月下旬 | 1,400m | ||||
ネクストスター笠松 | 笠松 | 10月中旬 | 1,400m | ||||
ネクストスター名古屋 | 名古屋 | 10月下旬 | 1,500m | ||||
ネクストスター園田 | 園田 | 10月下旬 | 1,400m | ||||
ネクストスター高知 | 高知 | 10月下旬 | 1,400m | ||||
ネクストスター佐賀 | 佐賀 | 11月上旬 | 1,400m |
重賞級認定競走(3歳春・4ブロック(持ち回り))
※実施場は令和6年度のもので以降持ち回り
競走名 | 性齢 | 負担重量 | 実施場 | 実施時期 | 距離 | 1着賞金 | 備考 |
ネクストスター北日本 | 3歳 | 定量 | 門別 | 4月中旬 | 1,200m | 1,200万円 | ブロック限定 |
ネクストスター東日本 | 川崎 | 3月中旬 | 1,400m | 1,500万円 | 全国交流 | ||
ネクストスター中日本 | 名古屋 | 3月下旬 | 1,500m | 1,200万円 | ブロック限定 | ||
ネクストスター西日本 | 園田 | 3月下旬 | 1,400m | 1,200万円 | ブロック限定 |
(3) 既存ダートグレード競走の総括的な見直し
既存ダートグレード競走については、カテゴリーごとの頂点競走を明確化し、頂点競走に向けた競走体系等の整備を実施します。
① 古馬短距離路線の整備
古馬短距離路線においては、下半期にJBCスプリント(JpnI)が設定されている一方で、上半期には目標となる競走が設定されていない現状を踏まえ、新たな上半期の頂点競走として、さきたま杯(JpnII・浦和1,400m)をJpnIへ昇格して実施いたします。併せて、これに伴う競走体系の整備として、一部ダートグレード競走の実施時期等を変更いたします。
競走名 | 格付け | 性齢 | 負担重量 | 実施場 | 実施時期 | 距離 |
さきたま杯 | JpnII →JpnI |
4歳以上 →3歳以上 |
グレード別定 →定量 |
浦和 | 5月下旬 →6月中旬 |
1,400m |
かきつばた記念 | JpnIII | 4歳以上 | ハンデキャップ →グレード別定 |
名古屋 | 5月上旬 →3月上旬 |
1,500m |
② 古馬中距離路線の整備
古馬中距離路線においては、11月から1月までGI/JpnI競走が連続して設定されていることを踏まえ、ローテーションの整備および出走馬の質の向上を図る観点から、川崎記念(JpnI・川崎2,100m)の時期を変更して実施いたします。併せて、これに伴う競走体系の整備として、一部ダートグレード競走の実施時期等を変更いたします。
競走名 | 格付け | 性齢 | 負担重量 | 実施場 | 実施時期 | 距離 |
ダイオライト記念 | JpnII | 4歳以上 | 定量 →グレード別定 |
船橋 | 3月上旬 | 2,400m |
川崎記念 | JpnI | 4歳以上 | 定量 | 川崎 | 1月下旬 →4月上旬 |
2,100m |
名古屋グランプリ | JpnII | 3歳以上 →4歳以上 |
グレード別定 | 名古屋 | 12月上旬 →5月上旬 |
2,100m |
名古屋大賞典 | JpnIII | 4歳以上 →3歳以上 |
グレード別定 →ハンデキャップ |
名古屋 | 3月上旬 →12月下旬 |
2,000m |
③ 古馬牝馬路線の整備
古馬牝馬路線においては、下半期にJBCレディスクラシック(JpnI)が設定されている一方で、上半期には目標となる競走が設定されていない現状を踏まえ、エンプレス杯(JpnII・川崎2,100m)の実施時期を変更し、併せて負担重量をグレード別定から定量へ変更のうえ、新たな上半期の頂点競走として設定いたします。
また、各地区から頂点競走へ向かう競走体系を構築する観点から、TCK女王盃(JpnIII・大井1,800m)の実施場を園田競馬場へ変更するとともに、兵庫女王盃 (JpnIII・1,870m)へ改称して実施いたします。併せて、一部ダートグレード競走の実施時期等を変更いたします。
競走名 | 格付け | 性齢 | 負担重量 | 実施場 | 実施時期 | 距離 |
エンプレス杯 | JpnII | 4歳以上牝 | グレード別定 →定量 |
川崎 | 3月上旬 →5月上旬 |
2,100m |
クイーン賞 | JpnIII | 3歳以上牝 →4歳以上牝 |
ハンデキャップ | 船橋 | 12月上旬 →2月上旬 |
1,800m |
TCK女王盃 →兵庫女王盃 |
JpnIII | 4歳以上牝 | 賞金別定 | 大井 →園田 |
1月中旬 →4月上旬 |
1,800m →1,870m |
ブリーダーズゴールドカップ | JpnIII | 3歳以上牝 | グレード別定 | 門別 | 8月中旬 →9月上旬 |
2,000m |
④ 3歳牝馬路線の整備
3歳牝馬路線においては、上半期に関東オークス(JpnII)が設定されている一方で、下半期には目標となる競走が設定されていない現状を踏まえ、マリーンカップ(JpnIII・船橋1,800m)の出走資格および実施時期等を変更し、新たな下半期の頂点競走として設定いたします。また、同競走の優勝馬にはJBCレディスクラシックの優先出走権を付与いたします。
競走名 | 格付け | 性齢 | 負担重量 | 実施場 | 実施時期 | 距離 |
マリーンカップ | JpnIII | 3歳以上牝 →3歳牝 |
グレード別定 →定量 |
船橋 | 4月上旬 →9月下旬 |
1,600m →1,800m |
3.その他
(1) ダートグレード競走の魅力向上に向けた取組
地方競馬のダートグレード競走は、これまでの競走成績を見ても、中央馬優勢の状況が続いており、地方競馬から中央馬と対等に戦える有力馬、とりわけ地方生え抜きの有力馬を十分にダートグレード競走へ送り込めていないという課題があります。
そこで中央・地方の有力馬同士が互角に対戦するダートグレード競走の実現を目指し、馬資源の充実に向けた取組を強化するとともに、ダートグレード競走の魅力向上に向けた施策に取り組みます。
・本賞金の増額
・地区重賞の競走体系整備や負担重量の見直し
・ダートグレード競走への出走奨励策
・ダートグレード競走地方最先着馬に対する褒賞金
(2) 国際化に向けた取組
地方競馬のダートグレード競走は、国内向けの格付表記として東京大賞典を除く全ての競走で「Jpn」を使用しており、国際的に認められた共通の格付けで管理されるべきパートI国の競走として、足並みが揃っていない状況です。
また、国際競走となっていない競走については、ブラックタイプ競走(セリ名簿に競走の格と馬名が太字で記載できる競走)の中でも評価の低いLR(制限付きリステッド競走)に分類されております。
このような状況に鑑み、日本のダート競馬の国際的な評価を高めるべく、地方競馬では2028年から段階的に「Jpn」表記の使用を取り止め、全てのダートグレード競走を国際競走とすることを目指します。より高い国際格付けの取得に向けた賞金額の設定やレースレーティングの達成、海外出走馬の受け入れ体制の整備など、国際化へ向けた具体的な取組を地方競馬一丸となって進めてまいります。
4.新しい競走体系の開始時期
2歳馬競走:2023年から開始
3歳馬・古馬競走:2024年から開始
※体系整備に伴う格付けの新規・変更・昇格申請については、全て日本グレード格付管理委員会において承認済み。